2018年09月16日
京商ファーストミニッツとラジコン業界について思う事

  


今年のホビーショーの最大の目玉?の一つだったのでは無いでしょうか?
京商ファーストミニッツ。
4980円(税別)という価格にして、2.4Gデジタルプロポーショナル制御、
ボデイは本家ミニッツレーサーと互換性有り、という事で業界内外にかなり
インパクトを与えたかと思います。

その昔似たコンセプトでパームランナーという製品を出していましたが
その後継的な位置づけの「トイラジ」ながらも、ホビーラジコンにかなり
近づけた仕上がりを多くの人が期待したのではないでしょうか?

最近、ラジコン業界全体が低迷しており、老舗月刊誌の休刊やサーキット
や小売店の閉店縮小、ラジコンメーカー自体も厳しい状況のところが出て
くるなど、長年ラジコンを親しんだ者の一人として業界を憂い、この新製品
が起爆剤になってくれればと思いました。
似たような考えを持った方も多数いたのでは?と推察します。

さて、そんな期待を持って発売初日にゲットし(張り切り過ぎ?(笑))
さっそく吉祥寺サーキットで箱だしシェイクダウンを敢行しました。

その様子がこちらの動画です。




ボディの出来は大変良く、商品の価格を考えると驚異的と感じました。
本家ミニッツレーサーとも互換性があるので載せ替えも楽しめそうです。


送信機単三2本、シャーシ単三2本というもの手軽で大変良いですね。
シャーシは、その昔に存在したパームランナーに良く似ていました。
というかかなり流用しているのでは?と思いました。

さて、
動画で見ていただければわかりますが、スロットルのほうがまあまあ
比例制御っぽくなっており、またスイッチ一つで最高速を2段階変え
られるので、入門者も安心です。この最高速規制は大変良いですね。

問題は、ステアリングのほうです。
箱にも「新リアルドライブ機構」デジプロ仕様と書いてあるので、
本家ミニッツのような滑らかなタイヤの動きを期待したのですが
動画にあるように、トイラジチックなカクカクステアでした。
ON/OFFに近いものです。

それだけではなく、ステアリングを戻した時のタイヤの戻り応答性
が悪く、またセンタートリムもずれ易く、まっすぐ走らせる事にも
難儀する状況でした。
この点パームランナーのほうが直進性はしっかりしていたように思い
ます。

この時点で感じた課題は、ハイグリップ路面における
・カクカクとしたステアの動き(ON/OFF的)
・ステアを戻した時の応答の悪さ(残り舵)
・中立のズレ
でした。

商品の個体差や初期不良の可能性もあるので、とりあえず条件を変え
て走行させてみたのと、車体を少しバラしてステア機構を見てみる
事にしました。

その時の動画がこちらになります。



フローリングやタイルのような低グリップ路面で最高速をLowにおさえ慎重に
スロットルやステアリングを操作すると、まあまあ周回できました。



このような使い方を想定して作られた商品なのかも知れませんね。
初めてラジコンに触れる小学校低学年の子などが、興味を持ったり友達と
遊んだりするには良いかも知れません。

また、フロントタイヤをドリフト用に換えたり、養生テープを巻くなど
してフロントのグリップを落とすと、まずまず走れるという記事も見かけ
ました。ただ入門用と考えると最初から改造前提というのは難しいかも。。

さて、動画にもありますがステアリング機構がどうなっているのか
見てみました。ネジ8本で上のカバー類が外れます。


ステアリング制御用の超小型モータがあり、ステアリングホイールの動き
に応じてモータの回転数が変わる事がわかりました。
また、タイヤの中立状態を制御しているのはバネであることがわかりました。

推測ですが、モータの回転数が概ね出力トルクに相関がある、という
仮定の元、中立復元バネと微妙なつり合いをとってステアリングの中間
状態を作っているのではないでしょうか?

だとすると、ON/OFFと割り切った場合に比べ、バネを弱くする必要があり
その為に、ステアの戻りが悪くなったり(グリップに負けて)、中立自体
がズレ易くなってりしているのではないでしょうか?

この機構だと非常に微妙なバランスの上に成り立っているので、正確かつ
滑らかな動作は難しいように思います。
そして、機構上ステアの中間状態でタイヤを保持することも難しいと
思われます。

通常のホビーラジコン用のサーボは、回転角度を検出するポテンショメ
ータと、モータ制御用のパルス幅制御(PWM)で、ステアリングの動き
通りにモータを回転させピタっと止める事が出来、その状態で保持し
本物の車のような繊細な動きが出来ます。

ファーストミニッツの機構は、限られたコストとスペースなどの制約の
中で精一杯工夫して比例制御を演出したと思われ、その挑戦には敬意を
表したいと思います。

しかし誠に残念ながら、多くのユーザーが期待した性能が出ていないの
と、デジプロ仕様という言葉から想像する動きとはちょっと違ったもの
になっているのでは?というのが率直なところです。

価格を考えると相当健闘した事は間違いないですが、前情報で盛り上が
りすぎたのかも知れませんね。。

尚、私の推察や記述にもし間違いがあればご指摘下さい。
訂正させて頂きます。


ファーストミニッツのレビューはここまでです。


ここから、私が思う事についてつらつら書かせて頂きます。

冒頭にも書きましたが1ラジコンファンとして業界を憂い、少しでも
活性化に役立てればと思い、誠に微力ながら筆をとった次第です。

私がこのサイトを1997年に立上げてからなんと21年もたってしまいま
した! そりゃ年とるはずだわ(笑)
最初にホビーラジコンカーを買ったのは40年以上前?で三鷹のトリオ
商会で、Cox02という小さなエンジンがついたぶんけんスカーレット
バギーが最初でした。
その後電動ラジコンカーの実質開祖となったタミヤポルシェ934や京商
スーパースポーツ、横堀模型ミニレーサーなどを購入し楽しんでいま
した。
長い話を短くすると(笑)人生で一番盛り上がったのは98〜2002年
AORc(オールオヤジラジコンクラブ)として活動していた時です。

ネットで知り合った数人と、ラジコンのゆるいコミュニティを立ち上
げ、最盛期は日本全国500名近くのメンバーがいたと記憶しています。
所謂レースで勝つ事を目的とした軍団ではなく、カツカツに走る人
もいましたが、主流は仲間とワイワイチキチキしたり、ボディの塗装
を競ったり、オリジナルシャーシを作ったり、改造したり、いろいろ
な工夫を持ち寄ってみんなでいじりあって盛り上がっていました。

この一連の活動から生まれ、その後業界に影響を与えたモノも多く
電飾とその複雑な制御、パトカーや働く車、ワイパーや自動ドアの
ギミック、個人用ラップカウンターやラップトーク、テレメトリ、
ドリフト、トラックボディ、、等々が少なからずAORcの活動が普及
を牽引したと考えております。
本当に面白い人達が集まり、アイデアを出し合い物凄い行動力で実現
していく様は、とてもダイナミックでした。

創設メンバーの一人の伊豆さんはその後ラジコンメーカーenRouteを
立上げ、途中から産業用ドローンの先駆けとして日本のドローン業界
をリードし続けているのは記憶に新しい所ですね。

さて、前置きが長くなりましたが(笑)
このような活動を通して非常に楽しませてもらい、仲間も沢山出来
人生を豊かにしてもらった「ラジコン」という素晴らしい趣味に
私なりに愛着があり、最近の低迷を憂いている次第です。

といっても、最近は鉄道模型や他の趣味活動が忙しくなってしまい
ラジコンは頻度が落ちており、殆ど業界に貢献できておりません。
申し訳ありません。。
それでもたまに昔の仲間とチキチキするのは楽しいものですね。

このサイトは、基本しょうもない日記やお笑い記事が主体ですが
一度だけ真面目な記事を書いた事があります。
2001年に業界の課題と展望と称して書いたこれです。

今から17年前に書いたものですが、久々に読んでみると、今につながる
話が多く、業界の構造的な問題と真因は変わってないのでは?
とも思います。

一言でいうと、入門者を受け入れ、初心者を育て、継続してもらう
ための製品、仕掛け、努力が足りてない、という指摘であります。

どの業界でも同じだと思いますが、入門者に広く門戸を広げ、初心者
をどんどん育てていけないと、衰退していきます。
ラジコンも、まあそういう事なんだろうと思っています。

もちろん社会情勢や、若者の○○離れや、スマホの影響、そもそも
クルマ自体に興味がないとか、業界をとりまく環境の変化もあるかと
思いますが、そういうのをさっぴいても、まだまだポテンシャルがあ
る奥深い素晴らしい趣味だと信じています。

さて、去年から突如鉄道模型(Nゲージ)にハマってますが(笑)
この観点でラジコンと比較してみると、大きな差があります。

・入門者に門戸を広げる
 誰でも一度は経験あるプラレールの役割が大きいですね。
 電車の模型の第一歩として金字塔を打ち立てています。
 幼児でも手軽に楽しめ、頑丈で確実に走り、線路を組み替える
 工夫の余地もあり根強い人気があります。

・初心者を発掘し育てる
 鉄道模型全国チェーンのポポンデッタという店が大きな役割を果た
 していることがわかりました。
 それまでマニアしか入れないような店が多かった鉄道模型店を
 イオンなどのショッピングモールなどに出店し露出を高めたのと
 店にレンタルレイアウトを置いて、レンタル車両もあり、気軽に
 Nゲージを走らせる体験をする環境を整えたことです。

 もちろんマニアの人が自分の車両を持ち込んでも十分楽しめます。
 親やおじいちゃんと一緒にモールに来たお子様がそのさまを目撃
 し自分もやってみたい、とせがめばすぐできる。そんな環境です。

 また欲しいとねだられても、数千円から車両は買え、中古品も
 扱っているので初期投資は少なくてすみます。
 もちろんひとたび沼にハマれば、奥の深さはラジコンと同等か
 それ以上なので注意は必要です(笑)

ご興味ある方は是非こちらもご覧になってみてください(笑)
東京近郊を中心に鉄道模型のレンタルレイアウトを紹介しております。

さて、ここで重要なポイントがあります。
プラレールは電池を入れてスイッチを入れれば確実に走る
という事です。
そこに技能や習熟度の差はなく、入門者が基本的なところでつまづく
事はありません。

また、ステップアップしてNゲージに行ったとしても、模型そのものは
精巧になり、扱いに注意は必要ですが、基本的に電車を線路の載せ
てしまえば、あとはコントローラで速度を調整するだけなので、確実
に走ってくれます。
初心者も中級者もベテランも同じように電車をジオラマの中で走らせ
そのカッコよさを楽しんだり、写真や動画を撮ったり、また競争では
ありませんが、駅から駅への運転を楽しんだりできます。

線路も別れているので、ラジコンのようにぶつかって怒鳴られる心配
もほとんどありません。

当たり前かも知れませんが、この

「基本的なところでつまづく心配がない」

という事はとても大切なことだと思っています。


翻って、ラジコンカーはどうでしょうか?

おもちゃ屋さんで売っているトイラジは、スロットルもステアリング
もON/OFFで、遠隔操作の雰囲気はちょっと楽しめますが、基本的には
思い通りに操縦する事は難しくすぐに飽きてしまうのでは無いでしょ
うか・・・

ホビーラジコンはどうでしょうか?
鉄道模型に比べるとやはり敷居が高いですね。サーキットをぶつけず
に安定して周回できるようになるには、ある程度の努力(練習鍛錬)
が必要でしょう。しかし継続して続けるには乗り越える必要があり
ます。

入門用としては、京商ミニッツレーサーやタミヤのXBシリーズなどが
あると思いますが、ステアやスロットルの動きはまずまず滑らかで
根気よく練習すれば個人差ありますが1ヶ月〜3か月くらいで、なん
とかサーキットを周回できるようになるのではないでしょうか?

課題があるとすると
・最初に試すには値段が高すぎる
・速度が速すぎる
でしょうか。

そして、ここで再びファーストミニッツなのですが
まさに今までの課題を解消し、入門者に広く門戸を広げる起爆剤に
なるのでは?と期待しました。
まさに、コンセプトや狙いは、ピッタリだったと思います。

だからこそ京商さんにはあきらめずチャレンジを続けてほしいと思い
ました。


再度言いますが、入門者、初心者が最初の壁を乗り越え、継続して
やってみよう!と思ってもらう事が最重要であり、そのためには
ただでさえ難しく敷居が高いラジコンの操作を早く覚えて自在に扱える
技量を持ってもらう必要があります。

その為には、「いい加減な道具ではダメだ」 と私は思います。

まっすぐ走らないもの、ハンドルを切ってもその通りにいかない車
で技能が上がっていくでしょうか?楽しいと思うでしょうか?
それどころか、ラジコンは思い通りにならないつまらないもの
と印象づけてしまったら、もう二度と戻ってこない可能性もあります。

だからこそ「最初の経験を大事にする」事を業界を挙げて取り組んで
頂きたいと勝手に思っています。

すぐに止まってしまう電車、脱線して一周もできないNゲージ
こんなものを与えられて初心者が楽しいでしょうか

まともに打ち返せないラケットでテニスが上手くなるでしょうか?

入門者や初心者用の道具は、むしろ中級上級用のそれよりも簡単で
確実に基本機能を果たすものでなければなりません。

ドローンも最初は飛ばすのが難しく敷居が高かったのですが、その後
技術革新もあり、スマホで誰でも安定して飛ばせるようになり爆発的
に普及して来ました。
ラジコンカーにいまだにそのような革新が無い事を残念に思います。

私の持論ですが、トイラジであろうと何であろうと
ラジコンに初めて触れてもらい興味を持ってもらうためには
下記は「絶対」に妥協してはいけないと思います。

1 ステアリングの比例制御(ホビー用サーボの性能必須)
2 矢のような直進性(車の基本です)
3 最高速制限機能(最初のうちは握りっぱしかできない)
4 フルセット5000円以下(ツーリングサイズは1万以下)

少し練習すれば、自在に走らせられるようになり、もっとうまく
もっと速く、もっと自在に、と思ってもらえるよう・・

とにかく扱いやすく、正確に精度良く走り曲がり止まる事が必須です。


過去いろんなチャレンジがあり、私の記憶する所では、上記に
一番近かったのが東京マルイのRC Club(だったかな)でした。
定価9800円くらいだったので予算オーバーしてますが、ステアや
スロットルは、まずまずの合格点だったと思います。

現時点で理想は
・ミニッツレーサーの大きさでフルセット
・車体は単三2本で駆動
・ステアリング/スロットル共、「真」の比例制御
・トップスピード10km/h以下で5/7もスイッチ一つで選択可能
・定価7800円以下
なら、かなりイケるのではないでしょうか?

と、好き勝手書いてしまいましたが、、
繰り返しますが、今の業界を憂い、今一度大きなムーブメントを作って
欲しい!盛り上がってほしい!一人でも多くの人にこの素晴らしい趣味
を楽しんでもらいたい、という一心からであります。

今回は製品の事のみ書きましたが、練習したりステップアップする為には
サーキットなどの環境も非常に大事ですし指導する人や、切磋琢磨したり
情報交換する仲間の存在も欠かせません。
レースで勝つこと以外にも多様な楽しみ方があることをどんどん提案し
刺激を増やす事も必要でしょう。

さらに、もっとハイテクを導入しカメラ、センサー、AIを駆使して、絶対
にぶつからない運転アシストとか、トレーニングロボとか、テレメトリ
を組み合わせて自分の運転の癖や悪い所の自動診断とか、面白いアイデア
も沢山出てきそうです。


少々苦言も呈してしまいましたが、主旨ご勘案の上、ご容赦頂ければと存
じます。

結論:頑張れ!ラジコン業界!!


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